脳科学の知識は私にはありません。
でも、高橋史郎氏の提唱する「親学」は、こうした「科学」の装飾を施すことで、いかにももっともらしい体裁を繕っているのではないか。科学の衣をまとった現代の修身教育ではないか、という疑いが消えません。米国のインテリジェント・デザイン論を思い起こさせます。
と、以前のエントリーで、教育再生会議のヒアリングに親学会副会長の明星大学教授の高橋史郎氏とともにふたりの《子どもの発達と脳科学》の専門家らしき人が呼ばれていたことをお話ししました。
同時に、どこかいかがわしさ漂う親学のおかしさも伝えたのですが、保坂展人さんも「教育再生会議の『第2次報告』に隠された『親学』」で次のように言っておられます。
「こ こで見逃してならないのは「最後に書かれている脳科学」「科学的知見」と書かれている部分であり、「親学」論者の根拠となっている。この「脳科学の科 学的知見」なるものについて、親学の再浮上を狙う人々との間で、本当に人間の成長・発達を裏づけていく「子育て指針」の根拠とするだけの水準となっている のかどうか。しっかりした議論をしていく必要がある」。
(以上)
さて、「新しい歴史教科書をつくる会」結成当初からの理事高橋史郎氏は「感性・脳科学教育研究会会長」。
この研究会セミナーの主題が「脳科学を教育に活かす 『セロトニン欠乏脳』 ~キレる脳を鍛え直す」(2005年)、「アートセラピーと脳科学」(2006年)等々。
で、↓ この高橋氏の近影
大時代的な風貌に思わず苦笑い。
ヒゲが口ほどにものをいってるでしょう?
この脳科学以外にも高橋氏が推し進めているのが道徳教育。
親学の土台が脳科学と道徳ということなのかもしれません。
この道徳を「研究」して社会に「普及」させようとしているところが、日本会議傘下のモラロジー研究所。ここは、文科省の後援を得て全国各地でセミナーを行っているようです。テーマは「心がつくる人生」だそうです。
例の日本青年会議所が、アニメ「学の夏休み」やDVD「誇り」を使ったセミナーを全国各地で繰り広げているのと同じ。
明らかに組織だった動きでしょう。
同時進行で、日本会議を構成する団体が一斉に活動中。
安部内閣伊吹文科大臣の下での、青少年改造計画。
「モラロジー」とは、「『最高道徳』の存在と内容を、科学的に説明した学問」だそうです。
でもこの最高道徳の説明を読むと、やはり学問より宗教といったほうが良さそうです。
最高道徳、という耳慣れぬ言葉。
仲間内ではこの4文字の漢字だけですべてが通じ合うのでしょうが、外部のものにとっては、なんとも違和感と気味の悪さを感じる言葉です。
この言葉、どこかで聞いたことがあるな、と思って記憶を辿ると、フランス革命時の恐怖政治下で唱えられた「最高存在」でした。
1974年、6月8日、最高存在の祭典が、最高責任者をロベスピエールにしてテュイルリー宮殿で行われました。ロベスピエールは、いわずとしれた恐怖政治の指導者。
彼が取り仕切る、新しい国家宗教の祭典が最高存在の祭典。
そして、モラロジー研究所が1999年に全都道府県に設置したのがモラロジー協議会。
ここでは、モラロジー協議会が窓口になって教育者に道徳研修会を行い、その後援・共催をしているのが文科省と各地の教育委員会だ、と言っています。
この研修会の基礎講座を修了したものだけが、最高道徳の講座を受講できるシステムになっています。
もうすでに何年も前から、文科省・教育委員会は、このモラロジー研究所とモラロジー協議会を通じてつながっているのでしょうね。
科学の衣をまとった宗教。
おかしいのは、最高道徳という言葉だけでは足りなかったらしく、「ニューモラル」という語がHP上に見られること。
モラロジー研究所が発行する道徳の副読本の名が『ニューモラル』。
昨年6月に発行された『ニューモラル』誌の内容は、
家族愛を育てる「お父さんは偉い」/国を愛する心を育てる「ハンス少年、祖国を救う」/相手の立場を考える「自分も生かし相手も生かす」/人間の気高さを 考える「一粒の涙」/自然との共生を目指す「植林をする漁師さん」/友情の尊さについて理解を深める「受験に失敗したT君」など計24編を収録
だそうです。
この表題を見る限りでは、普通の日本人にはそれほど問題とは思われないかもしれません。過激な言葉があるでもなく、宗教的表現が使われているわけでもありません。
でも、きっと、
「ニューモラル」で育った子どもたちが、「最高道徳」を叩き込まれた教師によって指導されるとき、最大効果を発揮するように仕組まれているのではないか
と、私など考えてしまいます。
そんな意味では、きっと“科学的”。
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