海舌さんがナオミ・クラインについて「 Naomi Klein氏のイラク観察は的確⇒三つの植民地主義の合体」を書かれています。

 私が読んだ彼女の講演録と同じようなものを海舌さんも読まれたようです。

 4月7日のエントリー「新植民地主義と国家の民営化 ワーキングプアにもなれない人たち」でナオミ・クラインさんの講演録の抄訳を載せていますので、再度ここでそれをとりあげます。

 ***** 以下、ナオミ・クラインの紹介とその講演録の抄訳(訳:とむ丸) *****

 新自由主義新植民地主義だ、と喝破するカナダのジャーナリスト、ナオミ・クラインさんの話しを聞いてみましょう。
 著述家としてもジャーナリストとしても評価の高いナオミ・クラインさんは、先頃ニューヨークであった講演で「国家の民営化」について語っています。

 彼女は『ネーション』『ガーディアン』のコラムニストで、『貧困と不正を生む資本主義を潰せ――企業によるグローバル化の悪を糾弾する人びと』や国際的なベストセラーブランドなんかいらない』の著者。
 この秋刊行予定の著書はThe Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism です。

 ではナオミ・クラインの講演から要約します。

 国家のあらゆる面を民営化しよう(完全民営化法人ユートピア)という動きは1973年のピノチェトがクーデターで政権を握ったチリに遡る。この時ピノチェト政権はミルトン・フリードマンの弟子にあたるシカゴ大出身の経済学者たちと手を組んだ(このことについては、花・髪切りと思考の浮遊空間さんも書かれています)。

 この時のプロジェクトは新自由主義と呼ばれるが、 従来の植民地主義とは異なる意味で「新植民地主義」といえる。

 新植民地主義の第1段階は、未加工資源の収奪、つまり未加工資源の輸出。

 第2段階が、大恐慌の後遺症の中と戦後好景気の時期に構築された医療保健制度・教育制度・道路・鉄道の収奪。
 つまり国家そのものの露天掘り

 アメリカにおいても、レーガン政権以来過去30年間にわたってこの民営化プロジェクトが推し進められてきた。
 タコの足でイメージされる国家の組織が、電話制度や道路サービスのように次々に民営化されて、まるで不要だとでもいうように足が切り落とされてきた。そして最後に残されたものは中心のコアと呼ばれるものだけ。

 ブッシュ政権は、 この最後に残ったコアを狙い、私たちが国家と考える本質的な部分、行政府そのもの・社会保障の管理・福祉・刑務所・軍隊の類を民営化してきた。

 2004年にイラクを訪れて目にしたものはハーパーズマガジンに寄稿した「バクダッド・ゼロ年」で述べたが、植民地主義と新植民地主義のこうした施策の積み重ね、収奪の追求だ。

 現在閣議は通ったが議会は通っていない新石油法では、この収奪が合法化されている。
 これはまさに、1950年代から70年代にかけてのアラブナショナリズムの波、資源の返還要求が出てきた状況であり、アラブ・ナショナリズムの旗印の下に築かれた産業・工場の収奪であり、90年代の旧ソ連で見られた矢継ぎ早に実施されたショック療法型露天掘り収奪であり、イラクの「プランA」だ。

 さらにポストモダンの時代は、イラクを侵略した米軍、米陸軍そのものが収奪された。これがポストモダンのイノベーションで、マクドナルド、タコベル、バーガーキング等のファーストフード産業を引き連れて戦争を遂行していくプロセスでの自己収奪といえる。

 イラクではありとあらゆることが大惨事になっている。
 確実にイラクの人々に惨禍がもたらされたが、同時に米国の納税者たちにも惨禍をもたらした。

 イラク情勢が悪化すればするほど、この戦争はますます民営化されるようになり、ロッキード・マーチン、ベクテル、ブラックウォーターといった会社がいよいよ儲かるようになる。

 イラクでは「任務の自然増殖mission creep」が固定化して終わりが見えず、多国籍軍に参加していた国々が撤退すればするほど、請負業者が潤う構造になっている。この間の事情を実証したのがジェレミー・スカヒルの本、Blackwater:The Rise of the Worlds Most Powerful Mercenary Army

 イラク、アフガニスタン、イラン、イスラエル、パレスティナ等での戦争や温暖化問題等の脅威、資源戦争の煽り、原油価格の高騰等を前にして、ダボス会議で唱えられた持続可能なグローバリゼーションは、もはや真実を映していない。
 
 the Guns-to-Caviar index (実際の訳語が分かりませんので、一応、「大砲vsキャビア指数」としておきます) は、戦闘機(大砲)とエグゼクティブの自家用ジェット(キャビア)それぞれに費やされる金額の間には反比例の関係がこの17年間、ずっと見られた。

 それがここにきて、突然、両方が共に上昇するという正比例の関係になった。

 これは、怖ろしく大量のキャビアを買えるほどの大砲が多量に売られていることを意味する。そしてこの経済活動の中心にいるのがブラックウォーターだ。

 戦争で暴利をむさぼるものと闘うためには、そうしたビジネスが成長する機会を取り除くこと。これは不安定な社会の空気や地政学的な要素をもっと平和的で安定したものに変えていくことだ。

***** 以上 *****

 ナオミ・クラインさんは、新自由主義をポストモダン時代の新植民地主義である、と喝破し、次のように新植民地主義を段階づけました。

第1段階:未加工資源の収奪

第2段階:行政機能の民営化。「国家そのものの露天掘り」

第3段階:戦争遂行プロセスでの「自己収奪

 天然資源に乏しい私たちの国では、第1段階は未加工資源の収奪ではなく、国鉄民営化に始まる一連の改革でしょうか。

 そしてコイズミ以来、第2段階に手をつけ始めています。

 防衛庁が防衛になって、第3段階が見え始めました。

 イラクでは「任務の自然増殖mission creep」が固定化して終わりが見えず、多国籍軍に参加していた国々が撤退すればするほど、請負業者が潤う構造になっている、という戦争遂行プロセスでの自己収奪を説明しましょう。

 この請負業者の一つが、以前のエントリー「奪われる背景」で書いたブラックウォーター等の民間軍事会社PMCで、『外注される戦争』にあげられているPMCはすべて、アメリカ、イギリス資本です。このあたりは、ブッシュのアメリカと同様に、ブレアのイギリスがイラク戦の深みにどんどんはまっていったことと関係あるかもしれません。

 兵站部門、つまり後方支援こそ、民営化の面目躍如、といったところ。

 イラクでは治安の確保が不十分なところで復興ビジネスが始まりましたが、軍隊以外の政府機関・民間企業・NGOの民間人をまもることは米軍のミッションには含まれていなかったのでPMCの安全サービスが必要でした。

 混乱に乗じて「ひと花咲かせよう」とイラク入りしたビジネスマンや元軍人たちは「安全ビジネス」市場に新規参入してきました。

 イラクの警察・軍・司法機関を育成するのもPMCが請け負っています。

 問題は、この軍事部門の民営化だけではありません。

 1990年以来米軍は、ソマリアでも、ハイチでも、アフガニスタンでも、イラクでも、民間企業と兵站支援契約をどんどん結んできました。

  そうした企業の一つは、イラクとクェートで5万人の従業員を抱え、60カ所で業務を展開し、米陸軍の基地の建設・管理運営、計20万人の連合軍兵士の食 料・洗濯、上下水道、電力の供給、米軍向けガソリン・潤滑油、ガス、スペアパーツ、弾薬その他戦争遂行に必要なあらゆる物資の輸送を手がけています。
 イラクでこの会社と契約して働く民間人は約10万。

 そして増大する一方のイラクでのコストに音を上げた米軍は、基地の運営でコストを削減を目指します。

 人件費の安い、劣悪な環境でも文句を言わない第3世界から従業員を募るだけではなく、兵士の生活する基地の環境そのものを安上がりなものにし、さらには新鮮で栄養価の高い食事と清潔な食事環境を提供してきた企業との契約を打ち切り、食費のコスト・ダウンを図ります。
 当然、食事の楽しみを初めとする兵士たちの生活そのものの質が大幅に低下することなったでしょう。

(こうした事情は、すべて菅原出著『外注される戦争』に描かれたものからとりました)。
 
 イラクで活動する民間企業とその仕事は数限りなくあります。

 世界中のさまざまな地域の人が戦場と隣り合わせの職場で、安くこき使われ、米軍自体が商売の対象にされる一方で、特需に湧く民間の軍事会社や兵站支援を請け負った企業は莫大な利益を上げる、という構図。

 国土が戦場となったイラクの人々は、土地も生活も破壊されて、命を奪われる。

「安全保障のコンセプトが変わった」と菅原氏は言いますが、 軍隊関係者でも軍事研究家でもない私は、こんな世界、やっぱりおかしい、と言いたいです。

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*追記: ベクテル社Bechtel Corporationとは、

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