・ タイムレコーダーを押してはいけない。

・ 朝の9時から翌朝の9時まで、不眠不休で働きなさい。

・ 残業代は1時間分だけ支払われる。それを超しても感知しない。

・ 8人の高齢のお客様を1人で看るのだ。走ってでも、誠心誠意尽くしなさい。

 とは、何カ月間かコムスンのグループホームで働いた、私のごく身近な知人の話。

 まあ、どういう言葉が使われたのであれ、こうした内容でヘルパーは指導されたわけです。

 特に酷いのは夜間だった、と彼女は言います。

 グループホームはお年寄りが1、2階それぞれに8人ずつ入所していた。それを各階たった1人ずつで介護していた。

 夜中に起き出す人、叫ぶ人等々、色々な人がいた。それこそ目の回る忙しさで、車いすに乗せてトイレ介助をしている最中に、他のお年寄りが起き出して転ぶことがあった。
 1人しか看るものがいないのだからどうしようもなかった。
 でもその責任を問われて、始末書を書かされた。

 コムスンで働き始めるときは何ともなかった体が、8カ月で辞めたときにはガタガタになっていた。
 ひどいのは足だ。
 走り回って介護をしているうち右足の指の付け根に痛みを覚えるようになり、ナースシューズからスニーカーにかえたが、それでもよくならなかった。辞めてもう1年以上経つが今でも痛むことがある。

 自分が働いている間も、いったいどれだけのヘルパーが辞めていったことか。

 ホーム長は看護士だったが、ノルマを課せられていて仕方なかった。
 自分が辞めたすぐ後に、そのホーム長も辞めた。

 だいたい、ヘルパーになる人は、それなりの志で仕事に意欲を持って臨んでくる人が大半です。
 簿記のできる彼女は、長いこと小さな会社で事務をとっていました。心優しいそこの経営者が亡くなって会社が解散した後、ヘルパーの資格を取ってコムスンで働こうと決めたのも、実母を6、7年介護した経験からです。

「私はお年寄りが好きなんです。心尽くしてお世話すれば、とても喜ばれる。それがうれしいんです」と彼女は言います。
 そんな人間の善意がコムスンで踏みにじられた、と彼女は感じています。

 おそらくどこかで人間的な優しさも感情も捨て去らないと、コムスンのような会社ではやっていけない。けれど、目の前にいる相手はまさに自分に世話をゆだねられた生身の人間である。

 感情を廃して組織の中で介護マシーンになりきるか、それができるか? というところまで、良心を持った人間なら自分自身を問いつめることになります。

 ところが、介護マシーンの選択はとりようがないのです。

 なぜって、あまりに過酷な労働条件ですから、ヘルパー自身の体が追いつかないのです。マシーンになる前に、生きたからだが壊れてしまうからです。

 イベントのあるときは、24時間ぶっ続けの勤務の後も残業を命じられた。嫌だとは言えなかった。

 代わりはいくらでもいる、そんな感じだった。

 と、悔しさをにじませて語ります。

 また、辞めた後もすぐには社員名簿から本人名を除くことはない、とも説明を受けたとか。
 やってもいない介護の料金請求のときは、名前を使われたかもしれませんねえ、と、この元社員は笑う。

 ついでにいいますと、入社時に提出する保証人に関する書類で、保証人の職業を書かせられたのは、コムスンが初めてだったそうです。
 大手企業に勤める知人は、今では面接でもそんなことは尋ねられない。ましてやそんな書類は提出させない、と言ってますが。

 ここでもう一度、映画『ザ・コーポレーション』で説明されるサイコパス企業の説明を見てみましょう。

 他人への思いやりがない
 人間関係を維持できない
 他人への配慮に無関心
 利益のために嘘を続ける
 罪の意識がない
 社会規範や法に従えない

 ここまでくると、急成長を遂げたコムスンを擁する新興財閥グッドウィル・グループの総帥を「成金」と笑ってすますわけにはいかなくなります。

 アベ氏も、ゴミ拾いパフォーマンスなんか繰り広げていないで、コムスンのようなサイコパス企業の現場で、せめてひと月でもボランティアをしていただきたい。

 もちろんその際は、新自由主義政策を推進したコイズミ氏や、教育再生会議でボランティア云々を論じている委員の方々もごいっしょに! です。

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