米国大使館の「借地料滞納問題」を取り上げている喜八ログさんのエントリーを読んで、すぐさま国連分担金の滞納を思い出してしまいました。
*もっともこの国連分担金については、日本もそうそう威張れるものではありません。なぜって、日本はこれを慢性的に滞納しているからです。
この間の事情を、河辺一郎『日本の外交は国民に何を隠しているか』から見てみます。
90年代以降では平均して6カ月半滞納し、特に2003年は14カ月の滞納。
この日本の拠出の遅れは、どうも米国の軍事行動と連動しているようだ。
また2004年秋に常任入り工作を活発化させてから初めての拠出である2005年分は4月中にすませている(国連の会計年度は1月1日に始まり、この30日以内に払うことになっている)。比較的短い滞納期日だった(かなり露骨で恥ずかしい、と思いませんか?)。
議員がそのことを有権者に積極的に伝えているため、米国が滞納していることは、国民がよく知っている。
「例えば98年には、共和党の議会指導者が『国際的な人口計画の資金供与に関する政府と議会の間の対立が解決するまでは、滞納金を支払うための資金は提供しない』とアナン事務総長(当時)に述べた」。
「議員は選挙民・納税者の要望へのデモストレーションとして、(中絶を是認するような)醵出に反対していることを宣伝する必要がある」ために国連事務総長をもこうして利用し、有権者も自国の滞納をしっている。
ところが日本の有権者は一般的にこの滞納について知らされず、それどころか「遅滞なく支払っている」と、間違って認識されている。
外相(当時)川口順子氏でさえ、2003年5月7日の参議院決算委員会で「国連の分担金を誠実に、アメリカと違って誠実に払い続けているから我が国が国連の中で信頼を得て色々なことができている」と述べる始末だ。
とにかく日米両国は、確信犯として、国連分担金を滞納しているわけで、ことに日本は先進国中で一番ひどい。
経済大国として多くの分担金を負担しているとはいえ、そんなことをわざわざする理由は、圧力をかけるため。
安保理入りについても、「もっと大きな発言権」を得るためではない。
2003年5月の衆議院憲法調査会安全保障及び国際協力等に関する調査小委員会で、佐藤行雄・前国連大使(当時)が、
「日本の発言権は大変大きい」
「予算面で日本とアメリカが非常に大きな力を持っております」
と述べている。
結局、日本が「滞納」という手段を使ってでも、さらには常任理事国入りして果たしたかったことは、「もっと大きな発言権」を得るためではなく、別の意図があったようです。
こうしたことについて、私たち国民、というより有権者はほとんど何も知らされていません。
それどことか、耳障りの良い「国連重視」「国連中心主義」などという言葉を使って、いつもごまかされてきたのが実情でしょう。
内向けの言い分を外向けとは使い分けて、世論を黙らせておく、というのがこれまでの日本の為政者がとってきたやり方です。
事情に気づいたものはあくまでも少数者として多数の力で押さえ込む、というのが私たちの国の民主主義だったのかもしれません。
おまけにメディアの方もその矛盾を追及できない。
河辺さんは、日本の常任入りに問題に関する大新聞の不可解な社説を例にとり、その理由として3つの仮説を立てて考察しています。
1.論説委員である記者が、記事の内容をそのまま、文字通りに信じている。
2. 〃 が、政府の実態を承知していながら、その姿勢が変化することを期待して、または、野党の中でも意見が分かれているためにその分裂を促すことを恐れて、あえてこのような記事を書いている。
3.論説委員である記者自身が、政府のシンパである。
そしてこの3つの仮説を検討し、
・記者が政府の主張を額面通りに受けとって論評記事を書くようなことはあってはならないし、あり得ない、として1.の仮説を否定。
・2.の仮説も、論点が混乱していることや世論のミスリードにつながることから、考えにくい、と否定。
・論説委員という立場と経験にふさわしい知性と判断力を持っているならば、第3の仮説が当てはまりそうだ。
というところまで、論を進めますが、新聞社には日本外交に関して精通した記者が複数名いて、やはり3.の仮説も考えにくい、と前の仮説に戻ります。
結局、
「当 該分野に関する経験が豊かで、社説を担当する、政府の諮問委員などを務める記者らが、政治の実態を知らずに政府の説明を額面通りに受け取り、しかも政治的 言動に対するごく基本的な政治感覚も持たずに記事を書くという、あり得ない事態が起きており、同僚記者も同様の状態にあるのではないか」
という結論にたどり着くのです。
「何をどの程度わかっているのかも、何をどうしたいのかも自らわきまえていない人びとが政府や審議会などに入り、憲法の行方を左右するような提言を行っているのならば」、
「恐るべき知性の劣化である」。
こうした中で、急速な右傾化が私たちの国で起こってきたわけです。
ポツダム宣言受諾、敗戦、新しい憲法成立で「国体護持」の道を断たれた人たちが、60年かけて、一度は否定された旧体制=国体を復活させようと目論んできた成果でしょうね。
不幸に追い打ちのかけるのが、この旧体制復活の動きとともに新自由主義=新植民地主義がいっしょにやってきたこと。
「新しい衣」をまとったかに見える「旧体制」復活の動きと、新たな意味が含まれた「植民地主義」の現実が、どんどん私たちの社会を蝕んでいるような気がします。
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最後になりましたが、1998(平成10)年以来米国が大使館の借地料を滞納しているのには、何か理由があるはずです。
日本側がいらない、当分の間徴収しない、といっているのか、それともアメリカ側に何か戦略上の理由があるのか。
おそらくこの点に関しても、政府は本当のことを言っていないと思います。


