午後、叔父に代わり、夫とともに叔母の入院している病院へ。
 ソーシャルワーカーの方も交えて、内科の主治医、リハビリ医の説明を聞き、今後の相談。

 叔母が昨年大晦日に入院して、すでに3ヶ月を過ぎました。1、2ヶ月間、生死の境をさまよってよくここまで回復したものだ、と感激するほど元気なったのですが、これまで、さあ、リハビリが始まるぞ、という段になって容態が急変したのは1度や2度ではありません。
 今後についても予断を許さないということですが、とにかく本人の意欲が強いので、リハビリもできるだけのことをしてみようということになりました。

 叔母は現在問題になっている後期高齢者医療制度の対象者ですし、また機能訓練リハビリの給付日数制限(発症から最長6ヶ月で打ち切り)との関連も心配でした。あと約2ヶ月の訓練期間です。

 とにかく排泄が自力でできさえすれば、自宅に帰れる……それが目標です。うまくいかないときは、叔父も覚悟をしなければなりません。

 この人たちにはもっと高給をやってもいい。なにしろ命を助けてくれるんだから。
 病院の廊下ですれ違う医師や看護士を指して、これまでも幾度か、夫の口から出た言葉です。

 さあて、病人の話はここまでにして、新学期のついでに、教科書の話題を一つ。
 
 教科書といっても、教科書検定制度についてです。

 私の手元にある1冊の本。1977年に検定申請用として文部省に提出され翌1978年に2度目の不合格処分を受けた教科書原稿(白表紙本)の『検定不合格 倫理・社会』(三一書房刊)です。

 著者は久野収、中山千夏、森岡弘通、矢崎泰久、山領健二の方々。

「ほんの少し個性のある教科書を現在と未来の高校生へとどけたい」と希望して始まった教科書づくりでしたが、「門前払い以外の結果をもたらすことができなかった」と落胆する久野収さんは、「いまは何もいいたくない気分である」と前書きで語っておられます。

 この本を店頭で見つけるや、家永三郎さんが提起した検定制度とはいったいどんなものか、とたちまち好奇心が頭をもたげた家人が購入してきました。

 で、検定制度の仕組みについて中山千夏さんがまとめていましたのでそれをさらにまたまとめていきます。
 おそらく現在でも大して変わってないのではないでしょうか。

 まず、【検定の組織と手続】

      検定1

 教科書調査官と並んで重要なのが、教科用図書検定調査審議会
 この審議会は110人以内の学識経験者と関係行政機関職員の委員からなり、氏名は非公開

 審議会には3つの分科会があり、そのうちの教科用図書調査分科会が検定にあたる。
 この分科会は更に9つの分科会と各科共通の事項を審議する総括部会に分かれる、各部会の決定が審議会の決定となる。

 この他に、専門学識者や教員の中から文部大臣が任命した調査員の組織があり、その数、数百名といわれるが、この氏名も非公開

 第1段階:「調査」
 3人の調査員、審議会の関係委員、文部省教科書調査官の3つのグループがあたり、教科書1点毎に「調査意見書」と「評定書」が作成され、次の「審議」のための資料となる。

 第2段階:「審議」
  調査官の報告後委員の意見開陳。内容については一切非公開

* 調査員は民間人のためにそれぞれが他の職業を持っているため、時には10日~2週間になることもある約1ヶ月という短期間に教科書を吟味して調査意見書、評定書の作成は無理に近い。
    ↓
 文部省の教科書調査官が調査の中心となる。

* 審議会で委員に配布されるのは、調査官・調査員の評定結果の一覧表のみらしい。

* 結局、文部省の調査官がリードする調査であり審議である。

【評定】

 検定合格のための絶対条件と必要条件が法に定められている。

絶対条件;
 
1.教育基本法における教育の目的・方針や、学校教育法に定める各学校の目的との一致
2.学習指導要領に定める強化の目標との一致
3.政治的・宗教的立場の公正

必要条件;

以下の7項目に照らして欠陥がないと認められること。800点を超えれば「条件付き合格」となる。
     検定表Ⅱ

評定は次の7段階の尺度で行われる。

検定 表Ⅲ

この○やら△やら×については、○は満点の9割……等というように点数に換算される。

    検定表Ⅳ

第8項目の「創意工夫については次のように6段階に評定し、最高50点までに換算される。
    検定表Ⅴ
  
       検定表六

  これらの項目のどれにも×がなく、かつ全体の評点が800点を超せば「条件付き合格」。

 *調査者は欠陥箇所を見つけると、それぞれに「減点」をつけ、上記の必要条件1~7の項目毎に合計。
 その点数を教科書の総ページ数で割って得た比率を基準に評定記号を決める。

   以下参照

         検定表七

「修正しないと合格とは認められない」箇所1つにつき1~12、3点の減点。だいたいは2、3点の減点。
「修正する方がより良くなるが、修正しなくても合格と認められる」ものについては減点するものとしないものがある。

 

 * 評定法そのものが、採点者のさじ加減ひとつで結果に大きな隔たりが生じる「不明確極まりない方法」である。

 著者側にはこの「減点」の詳細は一切伝えられない。

 * 検定に提出する教科書は、“公正”を期すために「白表紙」と呼ばれるもので、著者、出版社名はどこにも載ってない。

 ところが、提出の際出版社は「著作編集関係者名簿」を文部省に届けなければならない。
 従って、著者、出版社名は調査の実権を持つ調査官に筒抜けである。
 
 これで公正が保たれるのか、甚だ疑問。

 なお、評定の詳細については家永裁判を通じて得られたものが多いようです。

 で、3月28日の官報で告示された学習指導要領は改訂案公表の後、文科省が勝手に181箇所を修正したことが報じられました。
 

 (修正の)大半は字句の修正や用語の整理だが、総則に「これらに掲げる目標を達成するよう教育を行う」と挿入し、「道徳教育」の目標に「我が国と郷土を愛し」を加えた。

 小学音楽では君が代を「歌えるよう指導」とし、中学社会では「我が国の安全と防衛」に加えて「国際貢献について考えさせる」と自衛隊の海外活動を想定した文言を入れた。

 改訂案に対しては、自民党内から「改訂案が教育基本法の改正を反映していない」と早くから不満が上がっていた。八木秀次・高崎経済大教授が理事長の日本教育再生機構も同様の立場で、文科省に意見を送るひな型となる「参照用コメント」を公表していた。

 一方、中学社会の「北方領土が我が国の固有の領土」という記述には、韓国が領有権を主張している竹島も加えるよう要望が出ていたが、「政治的判断」(文科省幹部)から応じなかった。

 改訂案への意見公募は2月16日から3月16日まで実施され、計5679件が寄せられた。

  で、こうした学習指導要領にいう“愛国心教育”という目的との一致は「絶対条件」にあたるわけですから、教科書は必ずこの線に沿ったものでなければ合格しない、ということ。

 ううん……

                             

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