今朝の新聞、テレビのニュースでは、「貿易自由化の新たな枠組み作りを目指す」というWTO・世界貿易機関の閣僚会合で、日本は「極めて厳しい立場」に立 たされている、ラミー事務局長が25日に提示した裁定案は日本にとって農業分野のさらなる市場を開放を迫る厳しい内容だ、日本は孤立状態だ、などと報じら れています。
IMF、WTO、世界銀行の3者が手に手を携えて搦め手か! などと嘆いても始まらないですね。
要するに、高い関税を課している農作物の数を減らせ、といわれて日本は困っているわけでしょう?
地産地消が基本だと思う私は、そもそも農作物を自由化することに、とても疑問を抱いています。
国際分業というものも、あまり信用してません。
適地適作で単一作物をつくり、国際競争力を高めるやり方が、果たして人の幸せな暮らしに役立つのだろうか、とつねづね疑問に思ってます。
たとえばカカオ豆の生産世界一のコートジボアール。外務省、各国・地域情勢によると、同国の経済状態は次の通りです。
同国の基幹産業は農業で、農業に従事する人口は全体の80%を占め、GDPの約30%、輸出の大部分を占める。主要産品であるココア、コーヒー等の一次産 品の国際価格の低迷、膨大な対外債務により、経済的危機に陥り、1987年5月にはパリ・クラブ、ロンドン・クラブに対して債務支払い停止を宣言。結果 1989年9月よりIMF・世銀の下で構造調整計画を開始した。しかし、1999年初めには経済改善策が不十分としてIMFによる融資が停止された他、 EUの援助約180億CFAフランに対する汚職が暴かれEUの援助が停止されたが、国内情勢の安定化に伴い2002年2月に再開。同年9月に発生した反政 府派による武装蜂起により国が2分され、その後の和平プロセスの停滞の中で経済活動は大きな制約をうけていた。1993年より産油が開始し、近年、石油輸 出額は、コーヒー、ココアの輸出額と並び、主要貿易品目となっている。
同資料には 2006年の主だった貿易品目として、計82億ドル稼いだ輸出品の内訳は、ココア、石油製品、材木、コーヒー等で、計50億ドルを支払って外国から買ったものは、食品、石油製品、機材等らしい。
ちなみに日本に関していえば、
(1)貿易額(2006年)対日輸出 27億3,300万円対日輸入 20億7,647万円
(2)主要品目(2005年)輸出 カカオ、カカオ製品等 輸入 鉄鋼板、タイヤ、自動車等
ということになるそうですが。
で、コートジボアールでは、周辺国からもかり集めた子供たちを奴隷労働にも等しいほど酷使してプランテーションで栽培したカカオやカカオ製品を輸出し、自分たちが口にする食品は輸入する、そんな構図が透けて見えるわけです。
おまけに単一栽培には大量の農薬や化学肥料が投入されますから、環境は悪化、破壊されることになりますし、そんな中で生活する住民たちには健康被害が出てくることは当然といえば当然。
国際的取引の場面で問題になる関税とか価格とかの前に、そんな理不尽な状況が原産国には横たわってます。
そうした状況に蓋をして自由貿易だ、グローバリゼーションだ、と唱えるのはおかしいのじゃないか?
プランテーションでカカオ豆生産に労働力と資金を投入するよりも、日々の食卓が豊かになるような農作物を生産する方がコートジボアールの人たちにとって幸せじゃないのか?
それが基本にあった上でのカカオ豆という国際的な換金作物の生産じゃないのか?
というのが私の思い。
おまけにカカオの取引価格はロンドンやニューヨークの国際市場で決まるのは、日本の漁民たちの先頃のストでふれられたように、魚の価格が生産者の手の届かない市場で決まるのとよく似ていますね。
経済や金融に携わる人たちは国際貿易の取り決めを用意するWTOについて全面的なほど肯定して話を進めるわけですが、食の問題は経済的な問題だけでは割り切れないのではないか、と私は強く思います。
ですから経済的側面だけを切りとって侃々諤々やっているWTOの会議にも、はなはだ疑問を感じています。
台所から見る日本の食の現場、とりわけ農作物の生産現場は、私の原風景。
子どもの頃毎夏過ごした農村の風景はまさに一変してますが、水を満々とたたえた田んぼを見れば、あるいは春先に収穫を控えた麦畑や、晩秋、一面ひからびた色にかわった大豆畑を目にすると、なんだか、田んぼの神さまや畑の神さまが降り立ったような畏敬さえ感じます。
自然の恵みの循環ですよね。
ところが自然の恵みと一口に言っても、ことは簡単ではないんですよね。
そりゃあ、植えっぱなし、収穫しっぱなしだったら簡単なのでしょうが。
田畑を維持して作物を取るには、人手もお金もとてもかかるのでしょう。
100%消費者の立場でスーパーで購入しているとそのことがなかなか想像できないのでしょうが、家庭菜園でもしてさらに産直店に出向くと、これだけの作物がなぜこれほど安いの?! と驚くことがしばしば。
プロの仕事に脱帽です。
今年の農業白書では食料自給率の問題がクローズアップされましたが、自給率の危機を早くに訴えたのは、私の記憶では西丸震哉さんです。結婚して間もない頃の70年代に買い求めたNHKの『今日の料理』で初めて知りました。
そして、減反政策なんかとらなくても耕す人はどんどん減っていってるんだから自然に減反されるんだとみんなと言ってるよ、と農村の住民から聞いたのもだいぶ前。
農民作家山下惣一さんも、日本の農村の現状と農業政策のおかしさに警鐘を鳴らしてずいぶん長くなります。
ですから農業白書の言を、なにを今さら、と思わなくもないのですが、これ以上の農作物の生産現場を崩壊させないでほしい、と痛切に感じます。
最後に昨年11月に東京新聞に載った山下惣一さんのインタビュー記事の一部を紹介しておきます。
清水 政府・与党の掲げる大規模で強い農業は実現しますか。
山 下 そうならないでしょう。だって、日本は国土の七割が山ですよね。川沿いに細々とみんな暮らして、日本の 農業はそこで食っていくためのもので、外に売るための農業じゃないですからね。基本的に自給農業です。うちのムラには農家が百二十戸ありますけど、政府の 支援対象となる四ヘクタール以上の人はいません。そんなところばかりですよ。
清水 農業の国際競争力とか、外国と勝負するという発想が間違っているということですか。
山下 グローバルな農業というものは世界中にありません。農業はローカルなものなんですよ。欧州はそれを理解しているから食料自給率も下がらないし、田園の景観も変わらない。世界中で日本が一番ひどい。
清水 なぜ、政府はそんな政策を。
山下 工業国だからです。工業製品を売るためにはグローバリゼーションに乗り遅れると困る。端的に言えば、クルマを売るために、他の国とFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)を結び、向こうから入ってくる農産物が日本の農業をつぶしている。
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