5日の閣議後会見で、太田誠一農相が2007年度の食料自給率が供給熱量ベースで40%となり、前年度比で1ポイント上昇した、とうれしそうに発表しましたね。自給率アップは13年ぶりだそうです。

 それにしても複雑に絡み合った農業問題が何一つ解決されていないのになぜ? と一瞬疑問が頭をよぎったのですが、輸入穀物の高騰の結果米の消費量が増えたせいだ、という説明を聞いて少し納得。

 要は、喜ぶほどのことではない自給率アップということです。
 政府は何もせず、ほったらかしにしていることに変わりないのですから。

 さらに、なあんだ! と思ったのが、こちらの記事

……同日発表された『平成19年度食料需給表』を詳しく読むと、それは四捨五入の結果でしかありません。カロリー自給率は、さまざまな統計データから推計された「国民1人1日当たり供給熱量」で「国産熱量」を割り、それが何%になるか、という数値です。もとのデータで割り算をしてみましょう。すると――

  平成18年度  39.33%
  平成19年度  39.83%

 要するに「小数点以下の差」でしかないのです。株式相場の用語を使って少し欲目に表現したとしても「強含み横ばい」でしかないでしょう。ここ10年余り日本の食料自給率は「40%」を中心に、小数点以下ヒトケタ台の端数処理の範囲内での「横張い状態」なんです。

  という話しです。

 さて、わが家は国産小麦と私手製の天然酵母を使ってパンを焼くのですが、穀類が高騰したというニュースを聞いて家人がすかさず、小麦粉じゃなくて米粉を使ったら、と言い出しました。
 いいえ、米粉は小麦粉よりもけっこう高いのよ、米粉のパンも独特の風味があって美味しいけれどね、と返事をしておきました。

 台所から見ると、お米も色々な使い方があっていい、と思う。でも、小麦粉が高いから米粉、というのはちょっと違うと思う。

  
  ちなみに生協で私が買う国内麦強力粉は、小麦たんぱくのグルテンをオーストラリア産のもので補っているようです。国内麦100%の原料ではふくらみが悪い、といわれます。
 最近は国内麦でも良いものが出始めたという話しもありますが、普段の買い物で購入したことはありません。どこで手に入るのかも知りません。
  
 小麦粉の全生産量のうち国内小麦を原料とするものは10%を少し超えるぐらいで、パンの原料としてはたかだか1%にすぎないのです。
 純国産食文化と思われる讃岐うどんの原料さえも、ほとんどはオーストラリア産ということです。

 国内麦は小粒でばらつきがある等々、外国産に劣るということで製粉業者にも人気がないらしいのですが、その上価格も高い。一方輸入小麦は品質も良く安定していて価格も安い。

 現在、輸入小麦には「マークアップ」と言われる金額が上乗せされて価格が決まっています。そしてこのマークアップ分が、国内の麦生産者に補助金として使われています。
 こちらによると、だいたい輸入価格の35%くらいがそのマークアップ分だそうです。
 農水省は「関税」ではない、といってわざわざマークアップというな言葉を用意したようですが、実態は、まあ、関税。

 そこで、このマークアップを撤廃しろ、それができなければ率を下げろ、と経団連あたりは従来から主張していますし、マークアップがなければ、粉だってパンだってもっと安くなるぞ、という方も大勢いるようです。

 台所から見ても、品質が良くて安ければそれにこしたことはない、とは思うのですが、やはりどこか違う、という感覚が残るわけで、なぜ自分はわざわざ国内麦強力粉を求めるのか、と自問してみました。

  農作物は地産地消が良いと思っている私にとっては日本の農業を大切にしたい、ということですし、小麦についていえば、素人考えながら、品質もまだ改良の余 地があるのではないか、という思いを棄てきれないからです。価格についていえば、大量に安くつくる大規模農法は難しい、という問題は抱えていると思い ます。
 もっとも米国だって、価格が下がれば農家に補助金を交付して競争力をつけるなど、手厚い農業保護政策をしているのです。

 農については食卓の豊かさと効率だけでは割り切れない部分がたくさんあって、たとえば環境保全の面にもっと焦点が当たっていいのではないか、という思いも強いですし。

 今春、コメの主要供給国による輸出規制が相次いだことはまだ記憶に新しいところです。
 輸出規制の理由は、国内価格を安定させて国内供給を確保する、ということのようです。
 どういうことかというと、こちらによると、

…… 輸出国が米の輸出を規制した原因は急激な価格高騰である。世界の米は消費増加やオーストラリアの干ばつによって不足気味であるが、在庫が底をついているわ けではない。ところでほとんどの米の輸出国では国内向けの米価格を安く設定している。したがって何も規制せずに放っておいたら、高く売れる海外に米が全部 流出してしまい、国内向けの米が不足する恐れがある。そこでインド、ベトナムといった米の輸出国の政府が輸出規制をかけたのである。

生産 量の大半が輸出向けの原油と異なり、元々米などの穀物のほとんどは国内消費向けであり、貿易の対象となる量は少ない。このような事情でハイチなどは輸入す る米がなくなったのである。つまり一旦米不足に陥ったら、輸出国と「仲良くしている」かどうかは関係がなく、米は入ってこなくなるのである……

 ということです。

 そういえば、米を買うことができなくなったハイチの庶民が泥を混ぜて作ったクッキーで飢えをしのいでいるという番組を見た記憶があります。それがYouTubeにアップされています。

 
 
 ハイチは、IMFからの融資と引き換えに、自国の農業が崩壊するのを許してしまったようです。
 IMF、世界銀行、そしてWTO。この3つが推進する貿易自由化にあらためて疑問を抱いてしまいます。
 コメで起きたこうした出来事が麦で起きたとしても全然おかしくないかもしれません。

 ただし、先述のマークアップ以外にも拠出金として価格に上乗せされているものがある、という話しがあります。詳しくはこちらへ。

 こうした不透明なお金の動きを排して、さらに私たちの食卓ばかりか環境まで守るために、また一般の都市生活者にとっても魅力ある農村を作って行くために、いまどうすればいいのか、本気で取り組む必要があるのだと思います。

 大田誠一農水相に、それができるかな? というよりも、それをする姿勢が見えるかしら、ということですが。

 グローバリゼーション=新植民地主義。
 途上国が輸出用の換金作物を単一栽培する農業の形そのものも、補助金で競争力をつけて農作物を輸出攻勢する米国流も、世界の食の事情を歪ませているのでしょうね。

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